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脳内の伊東くん2018年06月01日 15:58

「野生のエルザ」の物語をご存知だろうか? イギリスからケニアに赴任した狩猟監視官の夫婦に大切に育てられたライオンを、大人になってから野生に戻してやる話しだ。なかなかに感動的な物語でもあり、映画にもなった。そのテーマ音楽 BORN FREE (なんて素敵なタイトルだ!)は、ぼくの好きな曲のひとつでもある。

小学校五年生か六年生のときだったと記憶しているが、国語の教科書にその物語が載っていた。そのあとの設問は具体的に覚えていないが、たぶん「あなたはエルザのことをどう思いますか」というようなものだっただろう。先生に当てられて「人間に大切に育てられて幸せだったと思います」という趣旨の答えをした。先生は「他にはありませんか」と言ってクラス中を見渡した。しばらくは静かだったが、一人の手が挙がった。それが伊東くんだ。彼は勉強もでき、ふだんから仲のいい友達だった。その彼が発言した。「野生の動物が、人間に飼われて幸せなんでしょうか。」

衝撃だった。

ほんとに衝撃だった。衝撃以外の言葉が見当たらないくらい衝撃だった。あまりのことに、その後の授業がどのように展開したのかは、まったく記憶していない。ただただ、そのときの心の動揺だけを記憶しているのだ。

自分の答え以外に、別な見方があるなんて考えたこともなかった。彼の主張は完全に理解できる。同意もできる。それなのに、なぜ、ぼくには発想できなかったのだろう。それが悔しかった。

以来、何十年も、ぼくの頭の片隅のどこかには伊東くんがいる。ときどき「こんなとき伊東くんなら、なんて言うのだろう」と問いかける。「自己との対話」なんて高尚な言葉を知ったのは、それからだいぶ経ってからだ。偶然にも、その後の人生に役立つ幸せな体験を、このときしたのだ。

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