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「ガマの油売り」に学ぶ販売方法2018年06月03日 14:10

AIDMA理論というのがある。これは顧客の購買行動をモデル化したものだ。Attention(知る/気付く)⇒Interest(興味を持つ)⇒Demand(欲しくなる)⇒Memorize(覚えておく)⇒Action(購買行動)というモデル化されたプロセスである。もちろんモデルであるから現実には例外もあろう。それでも、まずこのモデルを理解しておくと効率のよいプロモーションを考えることができるという意味で重要な理論だ。

まず、知らない商品を買うことはありえない。しかし知った人が全員買うわけではない。だからターゲットが1,000人いて宣伝等で知った人が300人いたとしても、興味を持つのは100人、欲しくなるのは50人、覚えていた人は30人、実際に買う人は20人・・・と、人数はどんどん減っていってしまう。だから、なるべく多くの人に買ってもらおうとするなら次の2つの対策が必要となる。
 1.なるべく多数の集団(ターゲット)にアプローチすること
 2.各ステップの歩留り(ひとつのステップから次のステップに残る割合)を向上させること

この理論は1920年代にアメリカで提唱されたようだが、それよりもはるか以前からわが国では実務的におこなわれていた。それを「ガマの油売り」で見ていこう。「ガマの油」は江戸時代に用いられた軟膏剤であり、香具師などにより露店販売されていたようだ。

露店販売は、祭事などで人の集まる神社寺社境内などでおこなわれる。香具師は行者風の衣装を身につけ、一枚の半紙を懐から取り出すと、二つ折りして「一枚が二枚、二枚が四枚、四枚が八枚・・・」などと言いながら刀の切っ先で細かくしていく。最後には紙吹雪のように吹き飛ばしてしまうらしい。この目的は、何が起こるんだと興味を持った人を集めること、刀の切れ味がいいことを証することの2点だ。そして人が充分に集まったところで、その刀ですっと自分の腕を切る(実際にはフリをするだけのようだ)。その傷には当然、血が滲み出る。

見ている人はアッと驚いたことだろう。しかし香具師は慌てることなく懐中から薬坪を取り出して「ここに取り出しましたるはガマの油。ガマといっても、ただのガマじゃぁない。筑波山にいる四六のガマだ。四六五六はどこで見る。前足が四本、後足が六本、これを四六のガマという。そのガマを鏡張りの箱に追い込めば、己が姿に驚いて、たらぁりたらぁりと脂汗を流す。それをかき集めては三七、二十と一日間、トロリトロリと煮詰めたものだ。その薬効たるは・・・」などと口上しながら、ガマの油をちょいと指で塗りつけると、さっと半紙で拭き取る。すると刀傷は跡形もなく消えている。

おわかりだろうか。人々を集め、商品を知らせ、興味を持たせ、欲しくさせてしまう一連の流れを見て取ることができよう。同じことはテレビ通販でも見ることができる。しかもガマの油売りと違って、ネットの普及した現代では、さらに手が込んでいる。

ガマの油売りの時代には、そのときに買わなければ、次はどこで買えるかわからなかったろう。しかし現代なら、店舗で見て欲しくなった商品を、帰宅してからネットで注文することもできる。いや帰宅したら、もう忘れているかもしれない。そこでテレビ通販の常套手段は「今から30分以内にご注文の方に限り・・・」といって、AIDMAの「M」をスルーさせる仕組みだ。

時代が変われば手段も変わる。しかし「ものを買う」人の心の動きは、さほど変わらないのだろう。歴史あるわが国の商売をもっと研究すべきだと思う。

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