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~ 不確実な時代に、確かな基軸をもつ経営をおこなうために ~

部分的解決は、なんの得にもならない2019年02月24日 02:08

「金属板の四隅をネジでしっかり留める」という作業をしたことがあるだろうか? 初心者は一本のネジをぎゅっと留め、二本目に取りかかる。ところが三本目、四本目になるとネジ穴がわずかに合わなかったりする。無理に四本目のネジを留めたとしても、あれほどしっかり留めたはずの一本目のネジがまだ回せたりする。これは、ネジをしっかり留めることで金属板が微妙に変形し、それが他のネジに影響を及ぼすためである。だからベテランは、四本をゆるく留めると、対角線どうしのネジを固く締める。初心者が「部分」ごとに完成させて「全体」の完成にしようとしてうまくいかなかったの対して、ベテランは「全体」を「徐々」に完成させるのだ。

部分の総和は全体にならない』というのは一般的原理である。(部分の総和が全体になるのは線形性が成立するときだけで、それは特別な状況に過ぎない。)つまり、部分的解決を積み重ねていっても全体の解決はできないという可能性があることを意味する。これは部分的解決がほかの要素に影響を与えるからだ。

経営についても、この一般的原理はあてはまる。たとえば生産性向上を追求するために、営業員や販売員の接客時間を削減したとしよう。徹底して実施すれば、短期的にはたしかに生産性は上がることだろう。しかし、その結果として販売額が低下し生産性が落ち始める可能性がある。なぜならば、優秀な営業員や販売員は、一見ムダとも思える会話の中から顧客状況を把握したりニーズを見出したりしているからだ。この行為をカットすれば短期的な生産性は向上するかもしれないが、新たな提案や新たな商品開発はできなくなってしまう。その結果、やがて販売額は低下し生産性も落ち始めるだろう。この場合、接客時間の短期的効率性を高めるあまり、ビジネスチャンス発見に影響を及ぼしてしまうのだ。だからといってダラダラと接客すればいいというものでもない。効率は重要だ。それでも「締め付けすぎる」と他の要素に影響を与えるのだ。何事も「いい塩梅」が求められる所以である。

では、どのように進めればいいのか。まずゴールを明らかにすることが重要だ。上述の場合なら生産性を何%向上させる、ということになろうか。次には、そのために必要な要素をリストアップし、各要素の目標値を設定する(そのためには接客時間の現状調査も必要だろう)、その上で各要素のバランスを図りながら「徐々に」進めていくのだ。けっして一要素だけを突出させてはいけない。

経営者はもちろん、経営支援者もこれを充分に理解する必要がある。

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