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調和の幻想2019年05月01日 17:12

 「調和の幻想」といっても、ヴィヴァルディの有名な曲集(調和の霊感ともいう。)のことではない。
 令和元年の初日(5月1日)なので、少し「令和」の意味するところについて考えてみたいのだ。

 「令和」が発表された際、『一部の海外メディアが「」は秩序を示す「order」の意味だなどと報じたことを受けて、外務省は「令和」には、「beautiful harmony」、美しい調和という意味が込められていると説明するよう海外に駐在する大使などに指示』したとのことだ(NHK報道による)。「令」は、人がひざまずいて神の声を聴くという象形だという説もあるようだから、まあ超拡大解釈して beautiful でも良しとしよう。

 しかし問題は、神が異なれば神の声も異なるということだ。闘って勝取れという神もいれば、仲良く共存しろという神もいるだろう。いや、神はどうでもいい。心の根底で信じるものが異なれば、追求する beautiful が異なるということだ。

 平成の終わりの頃、所属しているアマチュア室内オーケストラの演奏会があった。小さな子どもは無邪気に声を上げたりすることがある。アマチュアと言えどもチケットを購入して聴きに来てくれるお客さんもいるので、演奏中に声を上げられたり雑音を発せられるのは、お客さんたちにとって迷惑なことだ。一方、演奏するわれわれだって、何ヶ月も練習を積んできているのだからベストな状態で聞いてもらいたい。そこで通常の対策は「未就学児お断り」と入場制限してしまうことだ。つまり異質なものを排除することで調和を保とうとする
 われわれもこの点をきちんと議論した。未就学児といったって全員が騒ぐわけではない。おとなしく演奏を聴いてくれる子どもだっている。また大人だってひそひそ話しをしたり、ガサゴソと雑音を立てる人もいる。とくにわれわれは、いわゆる普通の室内オーケストラとは追求する音楽性が異なるため、子どもたちにこそそのような価値観があるのだということを経験してもらいたい。
 それで、われわれは排除するのではなく理解してもらう方向で対策をおこなった。具体的には「お願い」と題する文書を一枚ずつ渡すことにした。完全とはいえないけれど、相当の効果をあげたことは事実だ。

 組織も同様だろう。異質のものを排除すれば調和を実現するのは簡単だ。しかし異質を排除すると、何も新しいことは起こらない。外部環境はどんどん変化していくのだから、新しいことが起こらないのは組織にとって致命的なリスクだ。そのためダイバーシティ(多様性)が不可欠となるが、すると「どのように調和」するのかが問題となる。

 この問題解決は一朝一夕におこなえるわけではない。しかし「もっと異質なものに興味を持つ」という姿勢が必要なことは間違いなかろう。何が同じで、何が違っていて、それはどうしてなのかを一人ひとり考えること。いたずらに批判したり、文句を言ったりする前に、考えること。beautiful harmony は、その先にあると考えている。

 今回の騒動のように「令和とはこのような時代であった」と総括される日が、やがてくるだろう。そのときに、まさしく「令和」という元号にふさわしく新次元の調和が図られた時代だったと言われたいものだ。