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【商工会議所向け】事業支援ではなく、経営支援を!2019年08月26日 17:43

商工会議所は伴走型経営支援を行うべし、との要請があってから5年ほど経つ。全国の意欲ある商工会議所は積極的な個社支援を展開しているが、専門家から観ると経営支援ではなく事業支援であることが多い。

「事業」というのは、言ってみれば「商売」のことだ。ある事業で売上を伸ばすとか、利益を増やすというのは事業支援に過ぎない。「経営」というのは、もっと幅広い。資金調達であったり人材確保育成というのは「事業」ではなく「経営」である。(中企庁や経産省も「事業計画」と「経営計画」は違うと指摘している。)

ところで2019年版中小企業白書によれば、営業赤字が35.9%、過去10年間で5回以上営業赤字なのが36.3%、さらには債務超過が33.4%とある。つまり、かなりの中小企業は、①構造的なキャッシュフロー不足であり、②不足分を(金融機関からの)借入れで補填している、ことが読み取れる。その結果として債務超過に陥っていると推測されるのだ。

たとえば、ある企業の営業利益が(減価償却を含んで)50万円あったとしても、金融機関への返済(支払利息を含む)が毎年200万円だったとすれば、毎年150万円のキャッシュフロー不足が生じていることになる。この企業の(限界)利益率が40%なら、たとえ販路開拓により300万円の売上増加があったとしても限界利益は120万円増に過ぎないから、これではキャッシュフロー不足という経営問題は解消されない。そのため新たな借入れを起こしてしまい、ますます資金繰りは悪化しかねない。

この企業の場合、金融機関への返済を毎年125万円に減額できれば、毎年45万円のキャッシュを生み出すことができ、キャッシュフローを確保することが可能になる。もちろん返済期間は長くなるし、場合によっては追加の信用保証料も必要になる。それでもキャッシュフローを確保できれば、事業を継続していくことが可能になる。

返済額の減額は金融機関との交渉になるが、そのための資料作成支援は「経営」支援にほかならない。この企業の例でいえば、販路開拓支援とともにキャッシュフロー確保支援を行なって始めて「経営支援」になるのだ。販路開拓支援だけでは「事業」支援に過ぎない。けっして経営が健全化しないからだ。

債務超過が全国で1/3もあるということは、みなさんの地域にも「キャッシュフロー不足」という経営問題を抱えた中小企業が数多く存在することを示唆する。求められているのは「経営」支援であって、「事業」支援ではないことを理解したい。