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補助金を申請(支援)するなら、公募要領を「きちんと」読みなさい2019年03月02日 16:48

よく知られているように、助成金と違って、補助金は申請書の審査がある。だから申請したからといって全員が受けられるわけではない。採択される申請もあれば、採択されない申請もある。そこで問題になるのは「何を書けば採択されるのか」ということだ。

ときどき商工会議所の経営指導員さんから「自信があったんですが、どうして落ちたのかわからない」と、申請書を読んで改善点を指摘してほしいという依頼(だいたいがボランティアだけれど)がある。多くの場合、パターンは同様だ。補助金の趣旨に合致していない、というのがそのパターン。

たとえば平成29年度補正予算の持続化補助金なら、公募要領48ページに次のように書かれている。
持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者の地道な販路開拓等の取り組み(例:新たな市場への参入に向けた売り方の工夫や新たな顧客層の獲得に向けた商品の改良・開発等)や、地道な販路開拓等とあわせて行う業務効率化(生産性向上) の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。
ここで重要なのは、販路開拓に必要な経費を補助する、ということだ。そして販路開拓とは「新市場」や「新たな顧客層」を開拓することだと書かれている。けっして「新たな顧客」の開拓ではない。つまり商圏内のシェアを高めるような活動は、この補助金の趣旨ではない。この販路開拓の背景には、中長期的な社会構造変化(人口減少や少子高齢化、グローバル経済化、デジタル技術の飛躍的進歩など)への対応を促進させようという政策的意図がある。

具体例で説明しよう。和式トイレの飲食店が、急増している外国人旅行者を獲得する手段の「ひとつ」としてトイレを洋式に改修するなら、この補助金の趣旨に合致する。この場合、外国人旅行者は「新たな顧客層」だからだ。しかし、既存顧客が高齢化したためトイレを改修しようとするなら、それは補助金の趣旨に合致しない。「新たな顧客層」開拓になっていないからだ。看板を改修しようが、内装をリフォームしようが、パンフレットを作ろうが同様である。すべては「新たな顧客層」を開拓するためかどうかなのだ。

さらに同51ページには『本事業の完了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれる事業活動(=早期に市場取引の達成が見込まれる事業活動)とします。』と書かれている。いくら外国人旅行客を獲得するといっても、トイレ改修だけで獲得できる見込みはない。英文パンフレットも必要だろうし、メニュー表の対応も必要だろう。それを外国人旅行客に知らせるための工夫も必要だ。それら一連の事業活動の結果として、外国人旅行客を獲得し売上につながることが見込まれるのだ。つまりトイレ改修だけでは補助金の趣旨に合致しない。あくまで趣旨は「早期に売上につながることが見込まれる事業活動」だからだ。

補助金の公募要領はボリュームがある。どうしても手続き方法や補助対象経費などに目がいきがちだが、もっとも重要なのは補助金の趣旨を理解することなのだ。だから公募要領は「きちんと」読みなさい。自己流の読み方が、もっとも危険だ。

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