presented by Consultants NOVARE. Inc.

~ 不確実な時代に、確かな基軸をもつ経営をおこなうために ~

COVID-19 東京都の状況分析 202004182020年04月19日 05:42

 東京都に緊急事態宣言が出た4月7日 (火)から12日経過した段階で状況分析をおこない、休業要請などの強い規制がほんとに必要なのかを検討しておきたい。
 以前のブログでも指摘したが、ネットワーク型の感染拡大の状況を把握するには、日々の感染者数ではなく拡大率を用いるのが、この分野の常識である(倍化期:二倍になる日数、も同じ概念だが、拡大率の方が管理しやすい)。拡大率が 1 より大きければ感染は拡大しているが、拡大率が 1 を下回れば感染は終息に向かっている。

【分析方法】 
 毎日公表される感染者数(正確には陽性判定者)は変動が大きいため、7日間の(変形)移動平均を用いる。またPCR検査の実施日と感染者数公表日にはタイムラグがあるが、ここでは2日で処理している。

【分析結果】
 まず陽性判定者の拡大率推移は次のようになる。
 初期の変動が大きいのは感染者数が少ないためと考えられるので、感染拡大は3月初旬から始まったとみられる。そして拡大率は3月下旬をピークになだらかに減少している。したがって潜伏期間を考えれば、3月20日~3月22日の三連休で気が緩んで花見などに興じて感染者が一気に増加したという指摘は当たらない。
 4月18日期(4月12日~4月18日)での拡大率(対4月5日~4月11日)は 1.06 であり、余程のこと(後述)がなければ、まもなく拡大率は 1 を下回る(つまり終息に向かう)ことが期待される。ここで注意すべきは、緊急事態宣言の効果が顕在化する前の状況である、ということだ。
 ところで以前のブログでも指摘したように、検査数が増えれば陽性判定者は増える。そこで日々の検査数と陽性率(一検査あたりの陽性判定者数)は次のようになる。検査数は棒グラフ(左目盛)で、陽性率は折線グラフ(右目盛)である。
 このグラフで特徴的なのは、4月中旬になってから検査数はさほど増加せず陽性率が高まっている現象だろう。検査数がさほどに増加していないのは、感染経路不明の陽性判定者が増えたことに起因すると思われる。また陽性率が上昇傾向なのは、このデータだけでは正確なことはわからないが、敢えて言えば大型クラスターの出現ではなかろうか。ニュースなどによれば、その大型クラスターは医療機関である。ところが墨東病院(感染者棟と一般病棟とは分離している模様)で発生しているのは一般病棟であるようだ。

【解決への考察】
 ボトルネックであった感染者用ベッド数については、無症状および軽症者をホテル等に移転することで解決の方向に向かっている。現在のボトルネックは医療従事者(PCR検査要員を含む)である。
 医療従事者の確保を考える際には、平均稼働率(現場でたいへんな思いをしている方々には申訳なくて使いたくない言葉なのだけれど、ほかに適切な言葉を思いつかないので使わせていただくことをお許し願いたい)の両面の考察が必要だろう。単純に数を増やしても解決にはならない。なぜならば医療機関がクラスター化しているからだ。医療従事者が陽性判定すれば、一定期間の隔離状態におかれ、有効数(全体から隔離数を減じた数)が減少する。それはまた従事している人たちへの負担を増やすことになる。したがって現段階の最優先事項は医療従事者を感染から守ることである。
 そのために必要なことは、医療従事者に充分なマスク、フェースガード、手袋、ガウンなど防御具を行き渡らせることだ。これは行政や政治が主導を取らなければならないだろう。
 またPCR検査を安易に拡充するのは愚策だ。それは検査員への負担となり、医療従事者の負担となる。これはボトルネックの解消と逆方向の動きである。むしろ重点を絞って検査実施すべきだ。それは手術前の患者など、思わぬところで医療従事者が感染する可能性があるからだ。

 上述したように、新たな大型クラスターの出現などがなければ、まもなく拡大率は 1 を下回り、終息に向かうことが期待される(都はこれを公表すべきだ。そして繰り上げてでも緊急事態宣言を終了させるべきだ。都民はそれほどバカではない)。しかし、拡大率が 1 を下回っても、まだ陽性判定者が出ることに変わりはない。それでも徐々に減っていくだろう。十分に自制しつつも、いたずらに不安に陥らず、社会機能を取り戻さなければならない時期に差し掛かっている