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~ 不確実な時代に、確かな基軸をもつ経営をおこなうために ~

名古屋フォーラム総括2018年07月10日 20:23

 日本商工会議所主催「第7回商工会議所経営指導員全国研修会」(全国フォーラム@名古屋)を無事終えた。例年のことだが、研修意図に基づいて課題を設定するのは、なかなかの負荷だ。とくに今年は膨大な演習用数値データを作成しなければならず、なおさらだった。それでも時代背景と商工会議所に期待されている役割(たとえば経済産業省「新産業構造ビジョン」)とを考えれば、誰かがやらなければならない作業だ。そのような意味で、今年は例年以上の強い使命感と覚悟とをもってお引受けした。

《意図》
 持続化をはじめとする補助金の申請支援もあり、伴走型支援のうち状況分析から計画策定まで(つまり伴走型支援の前半工程)は多くの商工会議所でおこなわれるようになってきた。しかし、その後の計画実施支援(後半工程)についてはほとんど未着手状態である。
 また現在、国の最重要施策のひとつとして「IT導入補助金事業」がおこなわれているが、商工会議所の取組みは今ひとつ弱い。しかし上述の「新産業構造ビジョン」や「小規模企業白書」を読めば、もはや待ったなしの状況であり、ITは苦手だからと逃げていることは自らの存在意義を否定することにも成りかねない。
 そこで「データ分析」の演習をおこなうことで、①データ分析が有効な経営支援になること、②それはまた計画実施支援の具体的手法となること、を理解していただくことを意図した。

《先進事例発表およびパネル・ディスカッション》
 いくつかの基本的講演に引き続いて、竹原商工会議所(POSデータの共有による遠隔モニタリング)と横須賀商工会議所(GISを活用したエリア・マーケティング支援)による先進支援事例の発表およびパネル・ディスカッションをおこなった。
 竹原商工会議所の事例は、経営指導員減少という制約条件のなかで、合理的かつ効果的な経営支援手法を示唆する
 また横須賀商工会議所の事例は、小規模事業者が単独で契約するには高価であるGIS(地理情報システム)を、公益性のある商工会議所が契約し活用する仕組みであり、小規模事業者にとって有益であるだけではなく、商工会議所にとっても新たなビジネスモデルを示唆する内容だった。
 二者の内容はまったく異なるが、どちらもデータ活用の定番であり、データ活用の幅広さを理解してもらえたのではなかろうか。

《グループ演習》
 3つの課題について事前にデータ分析をおこない、当日は分析結果をグループ・ディスカッションする形式でおこなった。課題の出題意図は次のとおりである。
【課題1】 アンケート結果をクロス分析することで、回答者を構造化すること。これは顧客満足度調査などの分析支援に必要な手法である。
【課題2】 3年分のPOS中分類データから経営課題を特定すること。実際、データ分析はしていないがPOSレジを使用している(いわゆるハード・メリットとして)店舗は多い。これらのデータから経営課題を特定することで、有効な経営支援をおこなえる。
【課題3】 顧客の組織化。一律のプロモーションではなく、顧客特性に応じたプロモーションをおこなうことで、低コストでハイリターンのプロモーションをおこなうことができる。とくに休眠顧客の活性化は、31年度に予定されている消費増税において必須の手段である。

《グループ演習所感》
 いわゆる地頭力の弱さを感じた。データ分析の場合、「とりあえず」できる操作は山のようにある。とりあえずグラフ化する、とりあえず個数をカウントする、とりあえず・・・。しかし「とりあえず」の中から真実を見出すのは奇跡だまずは目標を定め、逆算することで必要な作業を見出すーーこれは短時間で高品質な業務をおこなうための常識である。
 大企業などでは、頭のキレる上司から「仕事は後ろから考えろ!」とOJTで指導されるのが通常だ。この業界では、そのような上司がいないのだろう。これは伴走型支援に切り替わったのは近年であることによると思われる。
 その他、アウトライン思考だとかモデル化思考だとかが欠如している。つまり経営支援に必須である「高度な思考様式」が確立されていないのを強く感じた。この点については別途実施する研修会で取扱うとともに、次年度以降への課題としたい。

 上述のような弱さはあるものの、ディスカッションの方向性としては急激によくなったと感じた。数年前までは事例に与えた条件から外れた我田引水的な議論に終始するグループも多かったが、今年はそのようなグループはほとんどなかった。これは数値データを扱うという特性もあっただろうが、支援先に役立つためにきちんと分析しなければならないという支援マインドの変化もあるのだろう。この変化をたいせつに育てながら、上述した高度な思考様式に転換していく必要があろう。

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