presented by Consultants NOVARE. Inc.

~ 不確実な時代に、確かな基軸をもつ経営をおこなうために ~

正しく恐れる(1)2020年03月30日 00:25

 今回の新型コロナウィルス騒動をみていて、ふと、量子力学や相対性理論を勉強していた頃を思い出した。どちらも20世紀初頭に始まった学問で、扱う対象は大きく異なるけれど、共通しているのは「古典的な認識への変革」であったということだろう。20世紀の中頃に始まったカオス理論だってそうだ。

 19世紀までは、完璧な測定をおこなえば事実は完全に把握できる、と思われていた。われわれがある物体を見て「そこに存在する」と認識するのは、当たった光が物体で反射した光を見ているからである。もっと精密な装置を使えば、その位置はもっと正確に測れるにちがいない。
 しかし20世紀に入ると、これが成立するのはマクロな世界だけで、ミクロの世界では位置を測ることはできないことがわかった。例え話で説明してみよう。(実際にはあり得ないが)止まっている電子の位置を測定しようとして、光子(光の粒)を当てることを考える。電子に衝突して跳ね返ってきた光子を捕まえれば、電子の位置は測定できるように思えるかもしれない。ところが当たってきた光子の勢いで、電子はどこかに飛んで行ってしまう。つまり跳ね返ってきた光子を捕まえた方向には、もはや電子は存在しないのだ。そう、ビリヤードのように。(どこに飛んで行ってしまったかわからないから正確に知ることはできないが、いそうな場所を確率として示すことができたのは人類の英知である。)

 このように、測定したからといって必ずしも事実が判明するとは限らない、というのが20世紀の知見なのだ。似たような例は身近にもある。たとえば選挙の際に、だれに投票するつもりかを事前調査して公表すると、当日の投票に影響がでると言われている。有力候補に投票しようとする人が安心して投票に行かなかったり、当落線上の候補に投票しようとする人が危機感を持って他者を説得するなど、事前調査結果が当日の投票行動に影響を及ぼすことは、よく見られる現象だ。

 さて今回のウィルス騒動。今のところ、検査しても感染しているかどうかはわからない。正しく言えば、陽性の人は感染していることは言える。しかし陽性反応が出なかった人(陰性と言われているようだ)は、偽陰性(感染しているが陽性反応が出なかった)の場合と非感染の場合とがある。そして偽陰性と非感染とは判別できないので、結局(陰性の人は)感染しているかどうかは不明のままである。
 これが判別されるのは(おおむね)2週間後とされている。ところが偽陰性(つまり感染)の人が、それと知らずにふつうの行動をとれば、その期間に感染者を増やしてしまうだろう(それが今回のウィルスの特徴のようだ)。したがって、いつまで経っても感染者数の実態を把握することなど不可能なのだ。それでも、まったくわからないのではなく、ある種の推測は可能になろう。それは検査結果の公表ではあるまい。

 いたずらに不安を募らせる前に、まず、このことを理解すべきだと思う。そして解決策を講じるための専門家として、医療関係者だけではなく、ネットワーク理論や確率過程あるいはカオス理論などの専門家が必要だと思うのだが。。。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://novare.asablo.jp/blog/2020/03/30/9229570/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。