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中小企業診断士 資格更新騒動2020年02月10日 15:35

中小企業診断士という資格には、5年という有効期間がある。資格を継続するためには、一定の条件を満たしたうえで手続きをしなければならない。一定の条件とは、有効期間内に「中小企業に対する経営診断実務30日以上(実務従事要件)」かつ「理論政策更新研修等を受講5回以上(知識補充要件)」を満たすことである。税金で運営されている資格なのだから、実務をおこなうだけではなく、つねに新しい知識を補充せよということなのだろう。

中小企業支援の仕事をしていれば、実務従事要件は何ら問題にならない。手ごわいのは知識補充要件の理論政策更新研修だ。1回4.5時間(休憩含む)の講義をじっと聞かねばならない。

しかし「手ごわい」のは、そこではない。もともとぼくは、この類のお勉強は嫌いではない。運転免許の更新だって、今はゴールドになってしまったが、それ以前に2時間の講習を受けるのは楽しくさえあった。最近の事故の傾向だとか、法律の改正だとか、興味深く聞いていたものだ。自分の知らない世界が目の前に繰り広げられるのはわくわくするではないか。

理論政策更新研修の真の「手ごわさ」は、そのレベルがきわめて低いことにある。中小企業政策の講義は、だらだらと支援施策を説明していくだけだ。少なくとも、いま中小企業に何が起こっていて、課題を打破するための方策を提示して、その実現をどのような施策で支援しようとしているのか、などストーリーの中で解説することが必要だろう。残念なことに、そんな講義は聞いたことがない。

また支援事例解説は、一部は専門性が高く勉強になるが、すべて局所最適の話しばかり。知識経営だとか海外展開だとかIT活用など重要ではあるが、それらは方法論に過ぎない。経営問題が定義されず、制約条件も明らかにされないまま、方法論だけ説明されても新たな知見とはならない。もちろん方法論の学習は悪いことではないが、中小企業診断士の知識補充要件としては不十分と言わざるを得ない。

じつは5年前に資格更新した(つまり今年度末までが有効期間)ときに、これを最後にしようかと考えていた。いや、考えていたというよりも迷っていた。中小企業支援業務には中小企業診断士の資格は必要ない(これが弁護士や税理士と異なる)。十分な知識と能力とがあればいいだけだ。中小企業診断士と勝手に名乗れないだけ。もともとこの資格は、行政と支援機関(商工会議所とか商工会など。近年は金融機関も含まれる)にしか通用しない。それなら苦痛を感じながら資格更新する必要はなかろう。能力を問われるのであれば「元・中小企業診断士」と名乗るのはどうかなどと真面目に考えていた。

2019年の12月ごろまで更新しようかどうしようかと迷っていたが、諸般の事情により、もう一回資格更新しようと(年が明けてから)決意した。実務従事要件は問題がないから、知識補充要件をクリアしなければならない。ところで「有効期間内に5回」とあるだけであり、毎年1回ではない。そこで30日足らずの間に5回の理論政策更新研修を受講して、無事に受講証明書5通を手にした。なかなかの精神修養にはなっただろう。