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~ 不確実な時代に、確かな基軸をもつ経営をおこなうために ~

ヒアリングしたら裏を取れ!2018年05月21日 23:15

従業員さん100人ほどで射出成形をおこなっている製造業さんを経営診断したときのこと。
どうも不良率が高い。納入先にも聞いたけれど、やはり不良が多いという。社長さんに、その点を指摘すると「わかっているんです。少しでも改善するために、改善提案を奨励して改善箱も設置しました。月に一度はコンサルタントの先生を招いて、改善の研修もおこなっています。それなのに社員はちっとも改善しようとしないんです。給料さえもらえれば、それ以上のことをしようとしない。やる気のかけらもないんですな。」

公的診断だったため、中小企業診断士4名で入っていた。社長さんのヒアリングが終わると、次は専務さんのヒアリングということになったので、私は「それは、みなさんにお任せします。ちょっと気になることがあるので別行動させてください。そのあと合流します」と断って、工場の中に入っていった。

勤務時間中だから、とうぜん従業員さんたちは一所懸命に黙々と働いている。しかし、どうも雰囲気がよくないのを感じた。そこで床の拭き掃除をしているおばちゃんを呼びとめて、工員さんたちに見られないような物陰で、ヒソヒソと聞いてみた。事情を説明してから「社長さんはこんな風に言っているんだけどさ、ほんとのこと知りたいんだよ。この会社をよくするために教えてくれないかなぁ。」

すると、おばちゃんもヒソヒソと喋ってくれた。「あぁ、そのことね。最初はね、みんながんばって考えて改善箱に入れてたのよ。ところがね、それを読んだ社長がさ、こんな細かいことじゃなくて、もっと大きな改善点があるだろって怒るのよ。それでみんな、改善提案してもどうせ怒られるだけだって出さなくなちゃったのよね。」

なんと、社員さんたちの意欲を削いでいたのは社長自身だった。もし社長ヒアリングを鵜呑みにしていたら、真実は見えてこなかっただろう。しかし社長さんだって嘘をついていたわけではない。社長さんが喋ったことは彼の認識であって、その認識が真実かどうかは別問題である。一方の言い分だけで判断すると真実を見失う恐れがある。だから別行動を取ってまで、裏を取りに行ったのだ。

経営支援というのは、どうしても経営者側の言い分を重視してしまう傾向がある。しかし真相は別なところにあったりすることを忘れてはいけない。だから『ヒアリングしたら、必ず、裏を取りなさい!