会社の目標は利益ではない! ― 2018年05月15日 06:28
ときどき「会社の目標は利益確保だ」という表現を見たり聞いたりする。
しかし、これはとんでもない誤解だ。経営者だけではなく、支援者(商工会議所の経営指導員や、税理士あるいは中小企業診断士といった専門家など)の中にも、誤解している人がいる。雇用だとか地域貢献だとかの話しをしているのではない。あくまでおカネの話しだ。
決算書の損益計算書を見てみよう。売上高という収入から始まって、なにやかにやと差し引かれて税引前利益になる。そこで税額が決まって、それを差し引いたのが当期利益という仕組み。
しかし会社の財布から出ていくおカネは、まだある。それは借入金の元金返済だ。金融機関からの借入が売上にならないように、元金返済は費用(損金)にならない。支払利息は費用として認められるから損益計算書で計上されているが、元金返済は費用ではないので損益計算書に書かれていないのだ。
基本は以上だが、ひとつ注意しなければならない点がある。それは減価償却費などの非支出性費用だ。減価償却というのは、たとえば800万円の設備を購入しても、耐用年数が8年であれば、8年間使えるのだから毎年100万円ずつ費用として計上しなさい(定額法)というルールである。つまり初年度は会社の財布から800万円支出したとしても、損益計算で計上できるのはそのうち100万円だけ。2年目から8年目までは、実際には会社の財布からおカネは出ていないけれど、100万円支払ったとして計上しなさいというルールだ。
ややこしいので例で考えてみよう、売上高1億円で当期利益が200万円(減価償却費100万円)の会社があったとしよう。もし借入がなければ、会社の財布に残るのは計算上300万円となる。ところが金融機関から借入があり年240万円の元金返済をしていれば、会社の財布に残るのは60万円になってしまう。これを創出キャッシュ(会社が経営活動で生み出したおカネ)という。
重要なのはここにある。この会社が、もし年360万円の元金返済をしていたとすれば、会社の財布は60万円不足することになる。この不足は誰かが埋めている。その方法はいろいろあるが、よくあるのは次の3通りだ。
1.会社の貯金を食いつぶす
2.役員が会社に貸し付ける
3.あらたに金融機関から借入れる
1の方法は単年度くらいならいいが、何年も続けば会社の貯金もなくなって、他の方法に頼らざるを得ないことになる。2の方法も、役員の個人資産が豊富にあればいいが、そうでなければ長くは維持できない。もっとも悪手が3の方法だ。あらたな借入は、元金返済の増額を意味する。もともと元金返済でキャッシュが不足しているところに返済額を増額したら、事態はより悪化するに決まっている。
以上からわかるように、会社の目標は「利益確保」ではなく「キャッシュ確保」なのである。くれぐれも誤解のないように。では、どうしたらキャッシュフローを確保できるのか。それは次の関係式だ。
元金返済年額 < 返済原資( 当期利益+減価償却費 )
「借金は返済できる範囲内で」という当たり前の話しである。